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(出身地的に)一番縁遠そうな真白がメイン。
縁遠いというかバレンタインというものを知らないので、それを教えられるところから始まります。

ただ、真白・・・恋愛感情はすべて諦めています。
というか何気に妻子がいます。
愛情は一切介入しない政略結婚で、お互いに利用し合っているだけの家庭ですが。
兄弟からすらも命を狙われるような地位にいたため、純粋な好意を向けられることがほとんど無いまま育っています。
隠居してからは、家族とすら関わることなく、ただ世界だけを眺めていた真白。

そんな真白は、こちらで書いた通り、大切な相手を見殺しにしています。
そんな罪の意識が今もまだ根付いていて。

・・・・・・難しくない?
真白で書くの難しくない!?
とくに罪に苦しむ心情とかちゃんと書けるの私!?

とか、無謀な挑戦をしてみます・・・(ほろり





その空間は、どの世界にも属さない場所。
それでいて、どの世界にも通じる場所。
時に狭く、時に無限の広がりを見せるその空間は、小さな部屋であったり、春風吹き渡る草原であったりと、空間の主の意志に合わせて姿を変える。

『世界の狭間』
――そこへ訪れることを許されたわずかな存在と、その空間の主である女性はそう呼んでいた。



「バレンタイン?」

真白はいぶかしげに聞き直す。
どうやら単語の意味すら理解できていないらしい。

「そうそう。バレンタインだよ。まぁ、君たちは知らないか・・・」

頷いたのは狭間の主たる女性。
癖の強い黒髪を高い位置でひとつに結び、飾り気のないシンプルな服装に身を包んでいる。
眼鏡の奥の瞳は楽しげに笑っていた。

「ある世界のお祭り・・・って言っちゃ失礼か。もともとは感謝とかそういうのを表現するものだったらしいんだけど、どっかの製菓会社が便乗してね。好きな相手にチョコを送るというのが追加された感じかな。むしろメインになっている感もある」
「つまり、その会社に踊らされているというわけか」

下らない、とでも言うように興味なさげに返す真白に、女は苦笑する。

「まぁそう言いなさんな。この日を何よりも大事にしてる人だっているわけだから」

普段は気持ちを表に出せないような少女たちも、このイベントがあればこそ、勇気を出して意思表示することもできるというものだ。
そんないじらしい気持を、軽んじる気にはなれない。

「どんな方法であろうと、気持ちを伝えることができる日だという事は、それなりに広く浸透しているようだし・・・・・・真白も無関係ではないのだろう?」

含みのある言い方をされ、眉を寄せる。
確かに、今日に限って数件、チョコを受け取ってほしいと言われていた。
その時は意味が解らなかったが・・・・・・

「どっちにしろ、俺は受け取れない」

わずかに罪の色に陰る瞳を伏せ、そう呟いた。

あの時は『受け取る理由がない』からとすべて断った。
けれど意味を知った今は、『受け取れない理由がある』から断るしかなくなった。

「そうであるならば尚更、受け取るわけにはいかないだろ・・・・・・俺なんかが」

自嘲する真白に、女は緩く首を振る。

「・・・・・・もう、いい加減呪縛から逃れてもいいと思うんだけどね。・・・あれは『彼女』自身が望んだ結末だった。一番被害が少ない道を『彼女』が選んだのだから」

伝えても、真白は頷かない。
その瞳の奥から罪の影が消えることはない。
いまだに真白の心には、大きな傷が残り、血を流し続けているのだ。

この傷を癒せるのは自分ではない、という事を、女は理解していた。
それが可能なのは・・・・・・

「まぁ、だけど。この後君に届く4つの品は受け取りなさい」
「だから俺は、」
「受け取りなさい」

真白の言葉を遮って、女は一方的に告げる。
いや、命じる。
自分の立場を利用して。
相手が逆らえないことを知っていて。

「4つだけでいい。他にも届くかもしれないが、どれを受け取るべきかは君にも解るから。・・・・・・さぁ、下がりなさい。君にはまだ向こうでやるべきことが残っている」

退室を命じられ、真白は重い心を抱えたまま頭を下げる。
次の瞬間には、その空間から掻き消えるように立ち去った。



一人になった女は思う。

彼を救えるのは自分ではない。
単純で複雑で、愚かな・・・何度も何度も間違えながら、それでも前に進んできたあの子たちだ。
あとは、全部任せよう。

真白の罪を――彼がそう思い込む過去を赦し、救えるのは・・・・・・あの子たち以外にいないのだから。

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