「もう、今回も、終わりなのですねぇ…」

ぽつりと、呟きが唇からこぼれた。

夕食も終わり、それなりにくつろいで。
そんな時間に抱えた感傷。

レイは記憶をなくさない。
時が撒き戻っても、その記憶は続いている。
体は３年という時間を何度も繰り返しながら、記憶だけは一直線につながっている。

「ある意味これは永遠と言えなくもない……のかも、しれません」

世界の崩壊とともに、消えるはずだった命。
ロストによって界を渡り、その場での消滅は免れたものの……
グラディスから離れている以上、この身に負荷はかかり続ける。

「長くは持たない、と……思ったのですけれど」

自分の手を見つめる。

どんな運命のいたずらだろう。
肉体が限界を迎える前に、その時を戻されるなどとは。

まだ、生きていて、いいの？

私は、ここにいて、いいの？

ならば私は生き続けたい。そう思った。
繰り返しの時間の中、それでも進むことが許されるならば。
笑顔だけは忘れないで行きたい。
夫と、子供たちと、そして古い、あるいは新しい友人たちと。

みんなで笑いあえる未来を。
『誰か』だけじゃなく。
『みんな』で楽しめる時間を。

一人だけではなく、たくさんの仲間と作り、紡ぐ世界。

愛しい。
ごく自然とそう思える。

だから……



　　　覚えていてね
　　　想いだしてね

　　　さくらの花の咲くころに



小さく口ずさむのは異界の歌。

私はまだ、生きている。
出会いと別れは、ここにもあるけれど。

だから、どうか。

たまにでもいいから。
たとえばさくらの季節だけでもいいから。

想い出してくれれば…繋がりは消えない。
繋がっている以上、きっとまた会えるから。
そのためにも、また、３年を繰り返そう。
この世界で。
みんなと一緒に笑っているから。