身ひとつでブリアティルトへ来てしまってから、どれだけ経ったろう。

いや、時間的には…ただ繰り返されるだけのものではあるのだけれど、それでも。
記憶を持ったままで繰り返される時間は、一つの流れとして認識され続けている。

懐かしい世界は……もう、はるか遠く。
諦めるしかない、と思っていたのに。

「…これ…」

武器をひとつ、譲ったお礼にと、届けられたそれは。

「コウが、わざわざ発注してくれた…着物…」

それは、過ぎ去った時間の中。
もう戻ることはできない世界でのこと。

夫と、友人と。
二人によって送られた…大切なもの。
なのに、持ってくることができなかったもの。

諦めていた思い出が。
今、この手の中にある。
また、触れることが…着ることができる。

ありがとう…
本当にありがとう。

着物を抱きしめるようにして、はらはらと涙を流す。

ありがとう。
またこれを着れるなんて思わなかった。

だからこそ、心から。

ありがとう。
ありがとう。
ありがとう。

大切な思い出の品がまたひとつ、この手に戻った。