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こちらは、月的歌劇様から頂いたSSとなります。


―桜雪― 

「きれ~い……」
 ほぼ白に近い銀の長い髪を風に遊ばせるレイが、真紅の瞳を輝かせる。
「うむ。実に見事であるな」
 着流しで如何にも寛いでいる、という様子の嘉兵衛が頷いた。普段は黒いスーツを着ている男だが、妻の今日の装いに合わせたのである。
 白地に淡い水色の雪の結晶が散りばめられた上質な着物。帯はレイの瞳と同じ真紅。
 花見に行こう、と誘ったのは嘉兵衛だった。喜ぶ顔が見たかったから。この着物も嘉兵衛が贈ったもの。
 嘉兵衛は今でこそ黒いスーツで洋装ばかりだが、元々和装が多かった。それに対し、洋装の多いレイが「一緒にお花見をするなら和服の方がいいでしょうか」そう言った事に、嘉兵衛が用立てたのである。
 嘉兵衛が、妻の普段と違う姿に見惚れていると、ふわりと柔らかい風が薄紅の花弁を舞わせた。
「うわー……花弁が雪みたいですね」
 レイはその光景にうっとりと口を開く。心を躍らせる彼女は、くるりとその場で実際に体も躍らせた。
 銀の長い髪が柔らかな陽射しに煌き、長い袖がふわりと広がる。
 嘉兵衛は、まるで雪の精が桜と踊っているようだ、そう思いつつも、
「……そんなにはしゃぐと転んでしまうよ?」
 口元に笑みを浮かべながら優しく微笑んだ。
「子供じゃないんだから大丈夫なのですよー」
 笑顔で口を開いたレイだが、
「……あっ」
 レイは、履き慣れない下駄であったせいか、足元にあった石に躓いてバランスを崩してしまう。
(着物が汚れちゃう……!)
 折角旦那様がくれたのに、大事に手入れもしてたのに。
 転んで怪我をする事よりも、真っ先に着物の心配が頭を支配した。
 しかし、覚悟した衝撃は訪れず、
「だから言ったではないか」
 腕を力強く支える温もりと優しい声が耳に届く。
「……う~……ごめんなさいなのです……」
 申し訳なさそうに体勢を立て直すレイ。
「……無事で何よりだよ。でも気をつけておくれ? レイに何かあったら私がどうしていいかわからないからね」
「はいです。もうちょっと着物にも慣れないとですね」
 柔らかく口を開く嘉兵衛に、笑顔で頷くレイ。その瞬間、
 ――ぐぅ。
 嘉兵衛の腹部から何か聞こえた。 
「それに……今レイに何かあると、私の腹の虫が抑えられない」
 はは、と嘉兵衛が笑って誤魔化した。
「ふふ、それは大変なのです。じゃあ、お弁当にしましょう。コウの好きな物いっぱい作って入れてきたんですよ」

***
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プロフィール
名前:レイ
誕生日:08/12/01
HP:水夢 -水の見る夢-
HP:しろうさぎの日常
伴侶:嘉兵衛
子供:璃磨、小鴉、小鳩、利奈
幻獣:真白、ロスト、リューク
このブログは、英雄クロニクルで遊ぶレイの創作日記です。
キャラとしての言動に理解のある方のみ、ご利用ください。
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